いわゆる地方分権について思うこと

地方分権とか地域主権という言葉があります。

これらの言葉がイメージするところは、要は明治以来の中央集権からの脱却で、政府の権限を地方自治体に委譲してそれぞれの地域に合った行政をしていきましょう、ぐらいかと思います。

もちろん裏には小さな政府志向で地方関連の国の歳出を削減したいという政治的思惑もあるのでしょうが、今は純粋な在り方としての地方分権を考えたいと思うのです。

 

僕も浅いながらも地方公務員としての勤務経験がありまして、地方分権一括法で担当事務の中に権限が委譲されたものがあり、それに伴う条例改正をやったことがあります(噴飯するほど取るに足らないものでしたが・・・)。

 

さて、地方分権議論の中で少し気になった話がありました。

それは「国の出先機関の廃止」というやつです。

行政の世界に興味ない方はピンとこないかもしれませんが、いわゆる「霞が関=中央省庁(文部科学省国土交通省厚生労働省など)」の多くは各地方に出先機関(事務所)を持っています。基本的には地方ブロック単位なので札幌市や福岡市、仙台市広島市等に多いと思います。そこに勤務する職員はいわゆる国家公務員(○○省職員。ノンキャリが多い?)です。

 

彼らは国が行う事業を直接執行するためにいます。国が行う事業は色々ありますが、各種許認可、補助金、道路管理、森林管理等々です。ちなみに労基署や税務署もこの範疇に入ります。

このように様々な事業を遂行するために、出先機関が入居している合同庁舎というものは、場合によっては地元の県庁・市役所よりも巨大なビルだったりします。

それが「国の権限の巨大さ」の象徴のように見做されて、「地方分権の時代に国が地方に巨大な出先事務所を設けるとは何事だ」となるわけなのです。

 

でも国の出先機関が充実しているということは、国が自分の事業を執行までやるということなのであり、それは当然といえば当然なのです。

仮にいま国の出先機関を廃止するとしたら、それまで国の出先機関が担っていた事務を地元の役所がやるようになるわけですが、執行部分だけ委譲しても大元の法律、規則、基準、指針などは国が決めているので、地元の役所が国の出先機関に成り替わるだけになってしまいます。これは地方分権とは逆の現象です。

 

実際、僕もかつて文部科学省と関わりの深い部署にいたことがありますが、文部科学省出先機関がないので、各地方で直接執行する必要のある文部科学省が決めた制度を担当することが多く、事実上国が作った制度の執行機関だな、と感じていました(自治体は本質的にそういうものだと言われればそれまでですが)。

ただし国が作る制度(補助金等)の多くは、制度上自治体が自らの意思で行う事業への助成というものになっています。とはいえ国がそのような制度を作ること自体、自治体へのプレッシャーになるので自治体の「やらされ感」は拭えないのです。

 

逆の視点からいうと、国がそのような自治体への助成制度を作らない限り、自治体は主体的に事業を行う意思も能力も財力も貧弱ということです。

たとえば、これはまた別の部署にいたときの話ですが、ある制度の一部分については自治体が定めることになっていたのですが、その内容は各自治体全く同じものだったりしました。これは国が示した参考のものを各自治体が丸々コピーしたからなのです。

このような事例は上げたら結構あるのではないかと思います。

 

しかしなぜこのようなことが起きるのかというと、各自治体が定めるような部分というのは大抵取るに足らない細々とした部分であって、各自治体ごとに違いを出す理由がないからなのです。むしろ違いを出してしまったら各自治体ごとに違った対応を要求される民間事業者や国民が困ることになってしまいますし、そもそも規則制定の際に問われる「なんでこうしたの?」にうまく答えられないからです。国の参考を丸写しすれば「国のを参考にしました」で済みます。これもまた、自治体の能力不足といえるでしょう。

 

ちなみに、前述した「噴飯するほど取るに足らないもの」とは、それまで国の規則で定められていたある「看板」の大きさを、自治体の条例で決めることができる、というものでした。

その条例の制定作業をやったのですが、素直に国の規則で決められていた文をそのまま当てはめたと思います。

 

僕がただ知らないだけなのかもしれませんが、 自治体への権限移譲の内実というのはこの程度のものが結構あります。

移譲されれば大きいものとしては許認可権限があると思います。最近では、沖縄県辺野古移設に伴う岩礁破砕許可が知事の権限だったのでもめましたね。あれは珍しいケースだと思います。

実際、何か許認可が必要な場合、その許可を出す役所が市町村だろうが都道府県だろうが国だろうが、国民からしたらあまり関係ないんじゃないでしょうか?

むしろあの許可は市で、この許可は県で、でもこの範囲を超えると国の許可になって・・・なんて方が実害があるのでは?

 

地域ごとにちがっているべきものと全国統一的であるべきもの、市町村がやった方がいいもの、都道府県がやった方がいいもの、国がやった方がいいもの。

これらを考えて適切に分けるのってなかなか難しそうなんですよね・・・。

 

続くと思います。