日本人はかつて本当に世界一豊かだったのか

バブル崩壊以降、日本経済は「失われた30年」とも言われる長期間の低迷に苦しんでいます。

 

以前、YouTube元号が平成になった瞬間のニュース映像を見ましたが、アナウンサーが「世界に誇る豊かな日本!」と叫んでいました。

今となってはそういう勢いはありません。

 

日本の名目GDPは90年代から変わっていません。

この間、諸外国はGDPを倍増させているので、日本の相対的な経済の大きさが急速に萎み、もはやかつての支配的な経済的地位から見事に転がり落ちました。

 

さて、今の話は国としての経済の大きさについてなので、中国のように国民がそれほど豊かでなくても、人口が多ければ経済大国 になります。

国民が豊かであるかどうかと、国としての経済の大きさは関係ありません。

 

かつて日本は豊かだったというのは、ドル換算の「一人当たり名目GDP」を念頭に置いているのではないかと思います。

 日本は、2000年にはこの尺度で世界第2位で、した。それが近年ではだいたい30位くらいです。

なぜこんなに下がったのでしょう。

 

日本は90年代後半以降、デフレが続いていたために名目GDPが大きくならなかったのが一番の原因ですが、ドル換算なのでドル円の為替レートにも大きく左右されます。

つまり経済が成長しなくても円高になればドル換算のGDPが増えるので順位が上がるのです。

また比較に使うのは名目GDPですので、インフレ率が高ければ、実質的に豊かになっていなくても数字上は高くなります。

なお実質GDPの方は、通常「経済成長率」を算出するときに使われますが、実質値は基準年を設定して、物価が基準年から変わらなかったものとして計る指標ですので、単純な額の大きさで比較することはあんまりありません。

 

さて、一人当たりGDP世界第2位だった2000年の日本は、世界で2番目に豊かだったのでしょうか?

それは否です。

一人当たりのGDPの大きさが世界で2番目だったのは事実ですが、それがそのまま豊かさを表しているわけではないのです。

 

国民の豊かさをもっと的確に表す指標があります。

それは「一人当たり購買力平価GDP」です。

これは国家間の物価の格差や為替レートを調整して算出するので、単純な名目GDPより正確に「生活水準」的な豊かさを表すことができます。

 

こちらの指標を用いると、2000年の日本の順位は26位で、今とあんまり変わりないのです。

1980年以降はだいたい20位前後から30位で推移しています。

 「日本人の生活水準」は、だいたいこの程度なのであり、「世界に誇る豊かな日本」は虚像だったのです。

 

とはいえ、90年代に比べると順位は10番程度下がっていますので全くふるわないのは明らかです。

また、名目GDPも低迷していることはそれはそれで問題なのですが。

 

なお、一人当たり購買力平価GDPで見ると、台湾にはとっくに突き放されており、韓国にはほぼ追いつかれています。

 

近代という世界史上「異常な時代」が過ぎ、概ね世界の近代化が完了したことで、近代以前同様ある意味「フラットな」世界に戻りつつあるのではないか、と思うのでありました。