日本の世界における位置について

近代以降の世界は、政治体制にしろ経済体制にろ科学技術にしろ、欧米世界がベースとなっています。

さらに、冷戦崩壊以後は、アングロサクソン(英語を母語とする民族)的価値観が世界の趨勢となり、言語も英語が世界標準となっています。

さらには産業革命の次なる転換点であったIT技術もアングロサクソン系のアメリカがリードし、現世界はもはや「アングロサクソンの時代」と言っていいでしょう。

 

このような中で、日本は一応先進国と認識されていますが、この「先進国」の肩書きを持つ国はどこになるでしょうか。

いろいろ定義はありますが、概ね一致するところでは西欧、北欧、米英加豪NZ、日本といったところかと思います。

 

しかしながら、世界情勢に影響を及ぼす力の大きさといった観点(大国かどうか)を含めると、次の国が「先進国かつ大国」の範疇に入るかと思われます。

すなち米英仏独伊日です。

これらの国は一人当たり名目GDPがだいたい3万ドルを超え、かつ人口五千万を超える国です。ついでにいうといずれも植民地支配を行った側の国であり、西側の国です。

韓国は近いうちに規模感としてはこの範疇に入りますが、19世紀から国際社会のプレーヤーであったこれらの国々の中で立ち回るには、まずはあらゆる分野での実績が必要となるでしょう。

 

ちなみになぜ植民地帝国が豊かで強いのかというと、支配を行った地域の富を奪うことができ、その富を国内資本として活用できたからです。

 

さて、近代以降から現在の世界は主に米英仏独伊日が目立つわけですけれど、この中にも力の序列が存在します。

序列が上の国から書きます。

 

まずアメリカ。

アメリカは「先進国かつ大国」の筆頭で、人口3億人、かつ国土も広く、今のところ敵なしでしょう。今後も世界で最も重要な国であることは間違いありません。

次はイギリス。

現在世界で支配的な政治形態(議会制民主主義)の元祖です。また、かつては世界一の植民地帝国であり、その富が集まったロンドンを抱えるため、金融分野についてはアメリカをも凌ぎます。

次はフランス。

イギリスとともに世界の覇権を争い植民地支配を広げ、惜しくも北米植民地をイギリスに渡してしまったために世界制覇は叶いませんでしたが、フランス語圏は広く、アングロサクソンに対抗し得る力を持ちます。

 

ここまでが先進国かつ大国「かつ戦勝国」です。

以下は先進国かつ大国かつ敗戦国で、保持していた植民地は狭く、近代までは政治的に地方勢力が力を持っており、近代化も多少遅れました。

そのため上記3カ国と比較すると、その国力は見劣りします。

 

ドイツ。

ドイツは 英仏と同じくらい先進性を持っていますが、近代まで地方勢力(小国)が分立していたために植民地獲得競争に出遅れました。

また、地方分権が強いため、ベルリン、フランクフルト、ボン等、有力都市が分立し、ロンドンやパリといった世界都市がありません。

近年はEUで存在感を高めており、また人口も八千万以上と多いため、英仏を凌駕する可能性があります。

しかしやはり大都市の不在でやや求心力が足りないかと思われます。

 

次にイタリアです。

ドイツと同様、国内分立の歴史が長く、近代まで統一されなかったために植民地獲得競争に遅れました。

やはりイタリアもローマ、ミラノトリノ等、都市の分立が目立ち、世界都市が不在です。

またイタリアでは南北格差が激しく、統一といった面でも不完全でありましょう。

 

イタリアと同率で日本です。

日本とイタリアが同順位というのはやや信じがたいと思います。たしかに現時点では日本の方に分があるでしょうが、長期的にはイタリアと同程度の国力に落ち着くと考えます。

 

日本は、他の先進大国と異なり西欧文明の国ではありません。また、近代化も遅れました。

現世界を支配し、先進的とされるのは西欧文明である以上、日本は欧米に追いつくことはできても追い越すことはできません。

欧米諸国は西欧文明を生み出した主体そのものですから、それを変化させ革新することもできますが、西欧文明を受容する立場の日本にはそれができません。

つまり世界が革新すればその度に突き離されてしまうのです。やがて長い時間をかけて追いついても、また革新が起きれば離されるのです。

 

IT技術はその典型で、アメリカという西欧文明国が生み出したものですから、やはり日本の受容は遅れています。

その点、イタリアは西欧文明そのものですので、受容は早いはずです。

科学技術や民主主義や資本主義が西欧文明と同一視されてしまった以上、非西欧は追従する立場から抜け出すことはできないのです。

 

ただ日本は、異なる文化を受容することには長けていたために非西欧国としては例外的な発展を遂げました。

これは、文化受容だけでなく、人口規模の大きさも寄与しています。

 

工業では、西欧を後追いし、そして肩を並べました。

しかしその間、IT技術等、西欧はさらなる飛躍を遂げましたが、やはりこの分野では日本の遅れが目立ちます。

日本は、FAXや手書き書類などの旧技術に固執していることから、すでにローテク国家と認識されつつあります。

 現在の日本の地位は、人口規模によって保たれているといって過言ではないのです。

 

残念ながら、この状況を打開することはできません。なぜなら日本人は西欧人ではなく、先進的西欧文明の受容には必ず抵抗があるからです。

日本みずから世界規模の革新をリードできれば話は違ってきますが、それほどの国力はありません。今後、世界に芽生える革新は全て西欧文明を土壌とするもので、他文明の影響は、あっても部分的なものにとどまります。

 

そのようなわけで、日本が先進大国であり続ける ためには、常に西欧から学び続けることが必須なのです。