地方分権の形と意識
さて、以前地方分権について思うところをちょろっと書いたのですが、その続きを。
この国の行政は、国、都道府県、市町村という3層構造になっています。
多くの事務の場合、国が基本指針を決め、それに則り各自治体が具体の計画を定めて実施します。計画策定や実施主体が、都道府県なのか市町村なのかはその事務により異なりますが、概ねこんなものです。
お金が絡む助成事業の場合も、多くは国のお金が1/2とか1/3の割合で入っていて、都道府県や市町村の単独事業というのは、あっても小規模なものや補完的なものなのです。
つまり今の行政は、地方分権といって権限を委譲しても根幹には国の方針があるため、実態としては自治体が国の出先機関の役割を果たすようになるに過ぎないのです。
財源についても、現状では自治体は自主財源が少なく、何か事業を行おうとすると国からの補助がなければ厳しいです。
僕もかつて自治体で働いていたとき、自治体の自主財源(一般財源)を使ういくつかの事業を新しく行おうとしたことがあるのですが、極めて難しかったです。というか無理でした。
財政部署があの手この手で次から次へと資料を要求し、最終的には挫折に追い込むのです。
もちろん彼らも上に説明しなければならないので厳しくなるのでしょうが・・・。
要求される側としては、ほとんど嫌がらせのように感じました。
逆に言えば自治体の財政力というのはそのくらいなのです。
ちなみに、自治体固有の財源とされ、使い道が限定されない一般財源として扱われるとされる「地方交付税交付金」ですが、実際はそうでもないケースもあります。
この交付金は国が各自治体で必要な経費を算出して交付金額を弾き出します。
つまり積算で使用した「想定される使途」があるのです。
なので、財政部署から「あなたがやろうとしている事業に係る経費が地方交付税交付金に含まれているか調べなさい。なければ却下」と言われたり、「現状でこの事業経費に係る交付金の上限を使っているので、これ以上の事業拡大は無理」と言われたりするのです。
基本姿勢が「自治体の方針や考え方に合わせて事業を行う」ではなく「国がお金を出してくれる(国がそれを行うことを認めている)から、事業を行う」というものなのです。
これでは本当に自治体は国の出先機関と変わらないように思いませんか。
というか、長い中央集権の歴史で、機関委任事務など、本当に国の出先機関としての役割を長い間果たしていた自治体は、その体制も考え方もすっかりそれに染まってしまっているのです。
とはいえ、このような現状のおかげで、日本全国ある程度均質な行政が実施されているという面もあるのですが。
仮に国から自治体に財源を委譲しまくり、完全に自治体の自主財源のみで行政を行うようにすると、大都市と地方で激しい格差が生じてしまうでしょう。
要はバランスなのですが、どのくらいが良いのかという議論は正直難しいです。
僕個人としては、自治体職員がもう少し自治の意識を持った方がいいのかなと思います(僕が勤めていたときのことしか知らないのですが)。現状の権限と財源に比して、自治体職員の自治の意識は低いと思います。地方分権の形が先行して、意識が追いついていないのです。
しかし自治を行うには自治体職員の能力に問題があります。
現状だと、仮に自治体にいくら権限と財源があっても良質な行政を行うことはできないでしょう。
むしろ国の庇護が薄くなることにより劣化すると思います。
自治体職員の能力の問題については、また書きたいと思います。